珍しい時間に無線で呼ばれた住宅街には、ママと娘だとわかるお客様が頼りない僕を待っていた。

紙袋六良
こんばんわ、ご予約のお客様でしょうか?

お願いします。中田(仮)です
このようにお客様のお名前を確認し目的地を伺うのだけど、こんな時間に子供もよく起きてるなと思ったんだ。

この車パパの臭いがする!
くさいと思ったのかな?どう答えようかキョドった僕は、秒で返した。

紙袋六良
さっきねー?赤い服を着た、髭がモジャモジャのお客様を乗せたんだよー

真綾(仮)サンタさんが乗ってたんじゃない?!
ママはすぐに話題を持ってくれて、「しめた」とおもった。

サンタクロースなんていないんだよ!パパもいないんだ!
車内が季節に共感したのか、すっごい凍りついた。たった数分の距離なのに、何をお話ししたらいいかわからなかった僕は道が解らないふりをして逃げた。

そこのマンションです
ママの声がゴールを教えてくれた。そして降りようとしない子供がスタートを知らせた。

ここで寝る!

運転手さん困っちゃうでしょ

紙袋六良
じゃあこのまま寝てていいよー。お仕事終わったら起こすからね
本当にそうなったらどうしようかビビった。

そんな困らせることしてたら、サンタさんお家に来ないよ!

うち煙突ないもん!2階になんて来ないよ
ママに手を握られて泣きながら車を降りた子は、僕の渡したラムネを振って見送ってくれた。
僕は何を思えばいいんだろうか?サンタクロースはきっといる。この子にきっと来る。2階に煙突がなくても、プリキュアのトレーナーをお気に入りにしている女の子に、お菓子作りのおもちゃを渡すんだ。
ロビン・フッドがいないならロビン・フッドになればいい!
なんかのアニメの熱い台詞だったなぁ。この子にサンタクロースが来たのかは、お話を聞いてくれたあなたの想像と、この子だけが知っている。
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