お客様日記⑧ 長距離のお客様

紙袋六良の小話
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タクシーのお仕事は、引き寄せの法則が当てはまることが多いと思う。

ワンメーターが続けば続くし、良いお客様が続けば続く。

ラジオのニュースで羽田の事が流れれば、羽田行きのお客様が乗ってきたなんて事もあるくらいにね。引き寄せてしまうんだ。

その日僕は苦手な朝の無線から逃げる為に、駅に着けておどおどとしていた。朝のラジオが羽田の事ばかりだったのが気になったけど、駅から長距離なんてまず出ないし気にし過ぎかなと思った。

経験上ラジオで流れるニュースを気にするとそっち方面のお客様が現れたりするからまさかなとは考えてたんだけど。

「羽田空港までお願いします。第二乗り場まで」

スーツ姿のお客様がいきなり僕に言い放った目的地はやっぱり羽田だった。確か横羽線は渋滞中って言ってたし、湾岸線はあまり使わないから自信がない。

やばいやばいやばい……

紙袋六良
紙袋六良

お客様すいません!自信が無いです!いま横羽線渋滞らしいので、慣れてない湾岸線で行くしかないんですけど、僕湾岸線慣れてないんです

少し考えてたみたいだけどスーツのお客様は言った。

「湾岸線で行きましょう!お願いします」

やさしい言葉だった。僕以外にもタクシーはあったのに僕の運転で良いと言ってくれた。

これは恩義に答えるしかないと思い、メーターを入れた。

正直ドキドキしていたから話しかけることもせず高速を目指し、事故だけは絶対しないぞといつも以上に注意して乗り込んだ。

お客様は僕が緊張しないように必要最低限の会話と案内をしてくれて、1時間もしない内に羽田空港に着いた。

「ありがとうございます助かりました」

お客様はカードで支払いを済ませお礼を言ってくれた。お礼を言いたいのは僕だった。

紙袋六良
紙袋六良

お客様、自信が無いと言ったにも関わらずご利用いただきましてありがとうございます

こんな簡単なやりとりでお客様は降りて行った。

お客様のありがとうが僕の心にずっと残った1日だった。長距離のお客様は意外とこんな感じが多いことは、タクシードライバーしか知らないと思う。

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